マンションの長期修繕計画について知っておきたい基礎知識
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マンションで行わなければならない修繕工事。ただ周期ごとに工事を業者に任せておけばいいというものではありません。しっかりと計画を立てた上で、必要な時期に必要なメンテナンスを行うことが重要です

また、マンションを運営していくためには資金の管理も重要です。修繕工事にいくら必要になるのか?収支はどうなるのか?マンションの資産価値はどれくらいあるのか?も考えていかなければなりません

そこで重要となるのが長期修繕計画です。今回は長期修繕計画の内容やその必要性、作成するポイントについてご説明します。 

マンション長期修繕計画とは?

長期修繕計画とはその名の通りマンションの修繕計画をまとめたものです。むこう30年間程度でどのような周期・内容で修繕工事を行っていくか?それによって収支がどうなっていくかという計画表を作成します

基本的には国土交通省が公開しているガイドラインに基づいてオーナーや管理組合が作成するのが望ましいのですが、そのマンションの大きさや建設資材、設備・機器、立地環境などによって必要な修繕工事の内容や周期が違ってくるため、外部に委託してそのマンションに適した長期修繕計画を作成してもらうケースもあります。

いずれにせよ、計画をしっかりと立てて、それに従って修繕時期が来たら必要な工事を行っていくことが大切です。

マンションの劣化 3つの要素

マンションは「物理的劣化」「機能的劣化」「社会的劣化」という3つの要素が複合的に組み合わさって劣化します。これらのバランスが耐用年数に影響を与えるため、一概に「●年経過したから修繕」と決めるのではなく、それぞれの部位や部材、機器別に修繕周期を定めることが重要です

新築マンションの場合は30年、既存マンションの場合は25年程度が計画期間の目安となっており、大規模修繕そのものの周期は10~12年程度が目安となっています。これをもとに長期の修繕計画を立てましょう。

物理的劣化

マンションは日々紫外線や雨水、炭酸ガスや排ガスによる影響、あるいは人々が暮らす上でダメージを受けることで物理的に劣化が進んでいます。具体的には外壁のひび割れ、雨漏り、鉄部のサビ、その他経年劣化で建物が物理的に老朽化することを指します

機能的劣化

建築技術や設備の性能は日々向上し続けています。建設当初は最先端の技術を持って建てられ、設備も最新式のものを導入したとしても、長い年月が経過するにつれさらに高度な技術、良い製品が誕生することで、マンションの機能は相対的に劣化していってしまいます。いわゆる時代遅れの機能や設備は交換・修繕が求められることもあります。

社会的劣化

年月の経過は技術の進歩だけでなく、人々の価値観や社会的なニーズの変化ももたらします。たとえば今日本では高齢化社会を迎えており、多様な人が生活できる社会づくりが大きな課題となっています。段差のある住まいは高齢者や身体が不自由な方には生活しづらいため、バリアフリー化が求められたりします。

マンション長期修繕計画の必要性

1.将来の修繕費用や工事内容を把握できる

マンションの長期修繕計画を作成することでさまざまなメリットがあります。まずは将来必要となる工事の内容や時期、費用が把握できるということです。

マンション、特に外観は年月が経過すると劣化が進みます。目に見えない部分でも外壁やそれに塗装されている塗料がひび割れたり防水材が損傷していたりすると、雨漏りや建物の腐食が発生します。しっかりと計画を立てることで、こうしたトラブルを防ぐことが可能です

また、マンションの修繕工事には多額の費用がかかります。工事費用を把握して資金管理をしっかりと行うことで、予算不足に陥るリスクを軽減できます。 

2.修繕積立金の金額設定の根拠として明示するため

マンションの修繕費用は管理組合員(マンションの入居者や区分所有者)が積み立てます。中にはこれを負担に感じる組合員、金額に納得できない組合員もいるかもしれません。長期修繕計画があれば、これを根拠にして積立金額が妥当であることを説得することができるようになります。 

また、工事費用の値上がりや想定外の修繕などが発生して積立金を値上げする場合は、組合員からの反発も予想されます。そういったケースでも長期修繕計画をもとに説明すれば、納得してもらいやすくなります

3.マンションの住民同士で修繕計画の全体像を共有するため

マンションの修繕工事は足場を組んだり作業員が出入りしたりするなど、住民の日常生活にさまざまな影響を及ぼします。特に大規模修繕となると工期が数カ月間に及ぶことがあります。その間には住民に不自由をかけ、場合によってはベランダに出ない、車を移動してもらうなど、協力を仰ぐ必要も出てくるでしょう。事前に長期修繕計画が出ていて住民の理解が得られていれば、修繕工事がスムーズに進みやすくなります

長期修繕計画の作成は、国土交通省のガイドラインを参考にしよう

国土交通省が定めたガイドラインとは?

国土交通省ではマンションの入居者や周辺住民の安全を守るべく、平成20年に『長期修繕計画作成ガイドライン』を公開し、マンションの修繕工事の考え方や長期修繕計画作成のポイントなどの指針を示しています。建築基準法をはじめ、これまでのデータや事例など多角的な要素を踏まえて作成されているため、長期修繕計画を立てる際に非常に役立つものとなっています

ここからはそのガイドラインの内容について簡単に見ていきましょう。

「大規模修繕工事」の定義

国交省では「大規模修繕工事」について以下のように定義をしています。

マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう。

引用:国土交通省『マンションの改修・建替え等について』

たとえば外壁塗装や鉄部の塗装、屋上防水工事、給排水管工事などが挙げられます。こうした大規模修繕工事は概ね10~12年ごとに行われます。

大規模修繕工事の計画策定にあたっての主な3つのポイント

①大規模修繕工事計画の基本的な考え方

大規模修繕工事計画を作成する際には「将来見込まれる大規模修繕工事の内容、おおよその時期と費用」「大規模修繕工事を実施するための修繕積立金の金額とその根拠」を明確にし、「大規模修繕工事を円滑に行うための長期計画について組合員同士で予め合意を形成しておく」ことが重要となります。したがって上記の3点を意識して計画を作成します。

②大規模修繕工事の計画作成の方法

長期修繕計画は以下のような項目を基本として作成していきます。

①マンションの建物・設備の概要等
②調査・診断の概要
③長期修繕計画の作成・修繕積立金の額の設定の考え方
④長期修繕計画の内容
⑤修繕積立金の額の設定

少なくとも上記の項目については長期修繕計画の中に盛り込んでおきましょう。

③修繕積立金の金額設定の方法

一般的に大規模修繕の費用は組合員が支払う修繕積立金によって賄われます。修繕積立金の額は計画期間の推定修繕工事費の累計額を計画期間(月数)で除し、各住戸の負担割合を乗じることで、月当たり戸当たりの修繕積立金の額を算定することができます
特に注意したいのは予算オーバーです。資金が足りないとなると必要な修繕工事が行えなくなってしまいます。かといって直前に修繕積立金を値上げしたり臨時徴収を行なったりといった事態も避けなければなりません。

長期修繕計画の作成をマンション管理士に依頼するメリット

国交省のガイドラインは長期修繕計画を作成する際に非常に参考となります。一方で、ガイドラインはあくまで指針であり、個別の事情に基づいた計画を作成ができないという難点もあります

そこで前述のとおり、長期修繕計画を外部に依頼する方法もあります。マンションの維持・管理に 関するコンサルティングを行う専門家であるマンション管理士に依頼することで、そのマンションの状況に合った長期修繕計画を作成することができます。また、会計のチェックやマンション運営のアドバイスなど、さまざまな面でサポートが受けられるのもメリットです

依頼料については幅があり、35~100万円程度が目安となります。

長期修繕計画の定期的な見直しが必要な理由とは?

長期修繕計画は一度作成したら終わりというものではありません。建物の劣化度合いは立地や気候、管理方法など、さまざまな条件によって大きく変わります。また、日進月歩で新しい製品や技術が開発されており、トレンドも変化し続け、さらには物価や人件費の変動など社会情勢の変化も影響してくるため、それらに合わせて定期的に見直していくことが重要です。

見直す方法としては、管理組合で見直すほか、マンションの管理会社やその他の外部機  関(マンション管理士など)に委託するといった方法があります。やはりこの場合にお  いても、専門家の力を借りると、より的確な計画の変更が可能となります。

長期修繕計画を見直すタイミングとは?

5年ごと(国土交通省が推奨)

国土交通省はガイドラインで5年ごとの長期修繕計画の見直しを推奨しています。そのため、一般的には5年ごとに長期修繕計画を見直せば問題ありません。しかし、前述のとおり、マンションはさまざまな要因で劣化が進みます。必ずしも5年周期が適当であるとは限らないため、注意が必要です。適切に計画を見直すためにも、第三者にアドバイスをもらうことをおすすめします。

大規模修繕の後

大規模修繕直後は長期修繕計画を見直す絶好の機会といえます。工事のやり残しや内容や予算の過不足など、反省点が明確になっているためです。積立金の増減もしやすいタイミングといえます。大規模修繕が終わった後は、さっそく次に向けて計画を立てましょう。

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