マンションの建物や設備は月日と共に消耗します。長期的に安心・安全な状態を維持するためには、大規模修繕工事が必要不可欠です。
本記事では、マンションの大規模修繕工事にかかる期間の違いや流れを解説します。
マンションの大規模修繕工事とは?必要性を解説
マンションの大規模修繕とは、マンションの建物や設備の主要構造部の過半を修繕することをいいます。
大規模修繕工事の実施期間は準備期間と着工期間に分かれ、修繕を進めていきます。なお、大規模修繕工事期間中はマンション入居者の暮らしに不便さが伴うほか、修繕工事の費用負担もかかります。しかし、建物の老朽化を防ぎ資産価値を維持させていくために大規模修繕工事は必要不可欠なものとなっています。
大規模修繕の準備期間とは?行うこと、期間の目安を解説
大規模修繕の準備期間は、一般的に長期修繕計画で予定している実施時期の2~3年前にマンションの理事会とは別で大規模修繕専門の修繕委員会を設立し、具体的な修繕計画を立てます。
そして、現状把握と建物調査診断を実施します。次に、大規模修繕工事実施の決議をとるために施工計画と資金計画を作成します。
続いて、決定された工事の進め方に基づいて、修繕工事会社の選定をします。修繕工事会社を選定するときには、複数の会社から見積もりをとって比較検討をします。
修繕工事会社から見積もりを得られたら、その見積もりをもとにして資金計画の再確認と見直しを行います。修繕会社やスケジュールが確定したら、工事説明会を兼ねたマンション臨時総会を開催。工事の実施をマンション入居者からの承認を得る決議を取ります。マンション入居者からの承認を得られたら、修繕工事会社と契約します。
ここまでの準備期間は、マンションの規模(総戸数)によって多少異なりますが約1~1年半と考えて良いでしょう。
大規模修繕の着工期間とは?行うこと、期間の目安を解説
準備期間が完了したら修繕工事を実施します。着工した後は、修繕工事会社の窓口となる現場代理人と話し合いを行いながら工事を進めていきます。その際には、仕様通りに工事が進んでいるのかを修繕委員会がチェックします。
また、着工後も追加工事で費用が発生するケースもあります。その際にも修繕委員会が追加工事の妥当性や金額を判断します。修繕工事が完了したらマンションの理事会が工事の状態を確認し、引き渡しを受けます。
なお、着工期間の所要日数の詳細は後述しますが、マンションの規模(総戸数)によって異なります。
小規模マンションの大規模修繕工事期間の目安【50戸以下】
50戸以下の部屋数で構成される小規模マンションの大規模修繕工事期間の目安は3~4ヵ月程度です。
注意したいのは、「小規模なマンションだから大規模修繕の準備期間が短くても良い」というわけではないことです。戸数が少ないからこそ、マンション入居者同士の関係性が構築されているマンションもあります。そこで準備段階で入居者の意見を十分くみ取り、意見調整を行うことで満足のいく修繕工事にしていくことができます。
中規模マンションの大規模修繕工事期間の目安【51戸~100戸】
51戸~100戸程度の部屋数で構成される中規模マンションの大規模修繕工事期間の目安は4~6ヵ月程度です。
中規模と言われるマンションは建物の規模も大きくなり、共用設備も増えますので、修繕委員会を中心にして、入居者の要望や工事にかかる費用と、工事内容のバランスを見ながら準備を進めていくことが大切です。修繕工事の際の検討事項も多くなってきますので、専門家に入ってもらいアドバイスを求めることも重要です。
大規模マンションおよびタワーマンションの大規模修繕工事期間の目安【101戸以上】
101戸以上の部屋数で構成される大規模マンションやタワーマンションの大規模修繕工事期間の目安は、半年から1年程度です。ただし、超高層や施工面積が大きいマンションになると1年以上、1000戸以上のタワーマンションになると2年以上の期間が必要な場合もあります。
このクラスの大規模なマンションでは、検討する項目も多くなります。そこで、依頼する修繕工事会社には大規模修繕の豊富な経験が求められます。入居者も多くなることから大規模修繕に対する合意形成に時間がかかるケースも多くなるため、大規模修繕の着工期間だけでなく準備期間にも余裕を持ったスケジュールで進めていく必要があります。
大規模修繕の平均的な周期について
大規模修繕工事のタイミングは、国土交通省が安全のため12年周期を提示しています。実際に、国土交通省が令和3年に発表している「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1回目の大規模修繕は15.6年が平均となっています。
12年周期は、国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン」による目安ですので、マンション入居者の意見や積立金の状況、建物の状態などによって、臨機応変に調整しましょう。
【大規模修繕の流れ】準備~着工及び完了までの10ステップ
マンションの大規模修繕は、準備~着工から完了までの10ステップに分け進めていきます。
1.大規模修繕修繕委員会を結成
マンションの大規模修繕工事を実施することが決まったら、一般的には、修繕委員会という専門委員会を設置して主導していきます(理事会が主導する場合もあります)。
この修繕委員会は、大規模修繕工事に関する内容の検討を行い理事会に提案します。大規模修繕工事の方向性を最終的に決定するのは理事会ですが、修繕委員会の役割は修繕工事の準備から工事が完了するまで工事全体に深く関わっていきます。
修繕委員会は必ず設置しなければいけないわけではありませんが、修繕委員会を別で結成することで、理事の負担軽減や理事会、区分所有者との合意形成が図りやすいなど工事を進めやすい傾向にあります。
修繕委員会の結成(作り方)に関する詳細は下記ページをご覧ください。
2.建物調査診断による劣化状況の確認
修繕委員会が発足したら、建物や共用設備の劣化状態や改修・更新の必要な箇所について劣化状況を確認するため、建物調査を行います。
この建物調査は修繕委員会自身が行うわけではなく、大規模修繕専門のコンサルタントやマンションの施工会社、建設会社などの専門家に依頼します。依頼した専門家には建物調査で修繕や更新が必要な箇所を特定してもらい、最適な修繕方法の提案とその提案に基づく見積もりを提出してもらいます。
3.修繕工事の施工計画と資金計画の作成
建物診断で現状を把握できたら、修繕工事の施工計画と資金計画を作成します。建物診断で劣化が進んでいると判断された箇所は優先的に施工計画に含める必要があります。
工事前の見積もりと工事後の支払額に差が出る場合もあるので、ある程度金額に余裕をもって計画を立てましょう。
なお、大規模修繕工事の資金としては修繕積立金が充当されますが、積立金が見積もりと比較して不足しているのであれば、短期間の特別積み立てや、工事内容の見直し、融資を受けるなどの対応策を検討する必要があります。
4.施工する工事会社の選定
施工計画と資金計画の検討が終わったら、施工する修繕工事会社の選定に入ります。修繕工事会社を選定する際には、大きく分けて3種類、「入札方式」「特命随意契約方式」「見積もり合わせ方式」がありますが、ポイントとしては以下のような4つのポイントから総合的に判断すると良いでしょう。
- 自社施工で中間マージンが入っていない業者を選ぶ
- 大規模修繕に特化しているなど、専門性の高い業者を選ぶ
- 見積もりからアフターサポートまで一括で依頼できる業者を選ぶ
- 設計や施工関連の有資格者が多い業者を選ぶ
5.施工計画および資金計画の再確認と見直し
選定業者から見積もりを取った後は、再度、施工計画と資金計画を見直して不備がないか確認します。そこでもし不備が見つかった場合には修正を行います。
6.工事説明会および総会の開催と決議の実施
大規模修繕工事の内容や予算が確定したら、マンション入居者に向けた工事説明会を含む総会を開催します。
その総会ではマンション入居者に対して、「修繕の目的は」「費用はどのくらいか」「どんな内容の工事を実施するのか」「いつから実施されるのか」「期間はどのくらいか」「どの修繕工事会社に依頼するのか」などの工事内容について報告をします。
7.工事会社と契約
総会でマンション入居者から大規模修繕工事の内容について承認を得られることで正式に工事会社と契約になり、修繕工事会社と工事請負契約や工事監理契約を交わします。
8.工事の実施
大規模修繕工事が実施されても、修繕委員会は工事が工程通りに行われているかなどの進捗状況を確認していくことが重要です。
また、実際に施工箇所を確認してみて初めてわかる不具合が発生することもあります。工事期間中は理事会や修繕委員会が、修繕工事会社と定期的な打ち合わせを行い、工事の進捗状況はもちろん、変更箇所の確認やマンション入居者からの要望などを共有することで、トラブル防止に努めていきます。
9.アフターフォロー
大規模修繕工事が終わった後は、保証書を受け取って工事完了となります。当社では、修繕後もアフターサービスを通して、住民の皆様とコミュニケーションをとらせていただいております。
まとめ:大規模修繕の期間は、一般的に合計で2年から5年程度
大規模修繕は、経年劣化したマンションの建物や設備を保持ししていくために必要不可欠なものです。
この大規模修繕工事はマンションの規模(総戸数)によって異なります。大規模修繕の工程を1つずつ着実に計画をもって進めていくことが重要です。
RYU-SHINは、神奈川県を中心にマンション・ビル・戸建ての修繕・改修工事専門を手がけている1級建築士事務所です。設計や施工に関する有資格者が多数在籍しており、多重下請け構造を排した100%自社施工と徹底的な調査・見積もりによって無駄を排した低コストかつ高品質な工事で好評を得ています。
マンションの大規模修繕工事のことなら、2003年に創業、年間数十件以上の施工実績を持ち、施工後の定期診断など充実のアフターサポート体制を持つRYU-SHINへご相談ください。
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