マンションのメンテナンスには「修繕」「補修」「改修」「改良」という種類があります。この記事ではそれぞれの違いをわかりやすく解説。建物に必要な工事の種類やタイミングを見極めるポイントについてもご紹介します。
修繕工事とは|マンションの大規模修繕はこちらに該当!
修繕工事とは建物の性能や見た目を建設当初の状態に近い水準まで戻す工事のことです。建物は日々劣化が進んでいきます。長い年月の経過によって見た目が悪くなってしまった箇所、性能が低下してしまった箇所を回復させるのです。使う部材も建築時と同じものか、それに極力近いものを使います。
修繕工事の例としては外壁塗装や防水工事などが挙げられます。外壁を塗装し直すことで見た目が元のように美しくなり、外壁材の保護機能も回復します。屋上やバルコニーの防水工事を行えば、防水機能を回復させることができます。
なお、10~15年に1回のペースで定期的に行われる大規模修繕工事に関しても、この修繕工事に分類されます。建物に足場をかけて全面的な修繕を行い、前述の外壁塗装や防水工事、シーリング工事、給排水管工事など、複数の工事を実施します。
修繕工事を行うことで、マンションの経年劣化を食い止め、資産価値を守ることができます。ただし、特に大規模修繕の場合は非常に多くのコストが必要で、長期修繕計画を綿密に立ててそれに従って実施することが重要です。また、修繕工事によって入居者の生活に大なり小なり影響が出ます。
補修工事とは|具体例を含めて内容を解説
補修工事とは建物の劣化した箇所や破損した箇所を修理して使える状態にする工事です。修繕工事では建物の性能や見た目を新築時と同程度の水準にまで回復させますが、補修工事ではそこまでの作業は行いません。不具合が発生している箇所に応急処置を施し、問題なく使える状態にまで回復させます。「小修繕」と呼ばれることもあります。
たとえば屋上やバルコニーのウレタン防水が劣化してきた場合は塗料を塗り直す、外壁材にヒビが入っていたら外壁材の部分交換やシーリング(継ぎ目やヒビが入っている部分を埋める作業)を行う、鉄部が錆びてきたら交換をするか防錆塗装を行うといった作業が挙げられます。
大規模修繕は10~15年の周期で行いますが、補修工事は特に周期が決まっていません。劣化箇所や破損箇所が見つかったら都度行います。したがって、何年も補修工事を行う必要性がないこともあれば、逆に数ヶ月ごとに何らかの補修工事を行わなければならないといったケースもあります。
補修工事のメリットとしては修繕工事と比較すると費用が抑えられる点と、住民の生活にそれほど影響を与えないという点が挙げられます。一方で建物の性能や見た目を完全に元に戻すことはできないのがデメリットです。
建物の劣化度合いによっては応急処置的な補修工事ではなく、しっかりと性能を元どおりにする修繕工事を行ったほうがいい場合もありますので、施工業者に建物の状態を確認してもらい、適切な工事を行いましょう。
改良工事とは|具体例を含めて内容を解説
改良工事とは資産価値を高めることを目的とし、建築当初よりも建物の性能や見た目を向上(アップグレード)させるために行う工事です。
具体的にはバリアフリー化や耐震補強、太陽光発電の導入、最新のセキュリティシステムの導入、ネット回線の整備などが挙げられます。
前述の修繕工事と補修工事はマンションを維持していくためには必要不可欠な工事ですが、改良工事はその限りではありません。しかし、改良工事を行うことでやはり入居者の満足度が向上し、新たな入居者の獲得にもつながります。費用はかかりますが、設備が古くなっている、不満の声が挙がっているなど改良工事を行う余地があるのであれば、マンションの付加価値を高めるための投資として検討してみても良いかもしれません。
改修工事とは|具体例を含めて内容を解説
改修工事とは建物の性能や見た目を回復させ、なおかつ建物の性能などの機能を向上させる工事です。前述の修繕工事と改良工事を同時に行うようなイメージです。
たとえば外壁塗装を行う際に今までとは異なる色の塗料を使う、セキュリティシステムの不具合があった際に最新式のセキュリティシステムを導入する、エントランスの工事を行うついでにバリアフリー化するなどが挙げられます。
単純な修繕工事と比較すると費用はかかりますが、改修工事を行うことでマンションの付加価値が高まります。修繕工事と改良工事を別々に行うのではなく、同時に行うことで費用を抑えやすくなることもあります。
大規模修繕は定期的に行わなければなりません。その際に今のトレンドに合わせて改修工事でマンションをグレードアップさせることで、入居者の満足度向上や新規入居者の獲得につながります。
表でそれぞれの特徴を解説
特徴 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
修繕 | マンションの性能や見た目を建築当初と同じ水準に戻す | ・マンションの資産価値を維持できる ・建物の性能や見た目を根本的に元に戻すことができる |
・費用がかかる(特に大規模修繕) ・工事で住民の生活に影響が及ぶ |
補修 | マンションの不具合箇所を応急処置的に修理する | ・修繕と比較して費用がかからない ・住民の生活にあまり影響が及ばない |
・補修してもすぐに不具合が出る可能性がある ・タイミングによっては補修工事が相次ぐことがある |
改良 | マンションの性能や見た目を建築当初以上の水準にする | ・マンションの付加価値を高めることができる ・入居者の満足度向上や新規入居者の獲得につながる |
・改修よりも割高になる |
改修 | マンションの不具合を直し、付加価値を高める | ・マンションの付加価値を高めることができる ・修繕と改良を別で行うよりも費用を抑えられる |
・修繕単体で行うよりも費用が高くなる |
建物に必要な工事の種類や実施のタイミングを見極めるポイント
1.劣化診断を実施して修繕が必要な箇所を見極めることがおすすめ
大規模修繕では外壁工事や給排水管・水道管工事、防水工事、共用部の補修工事、ベランダ・バルコニー工事など、さまざまな工事を行います。とはいえ、すべてを行うとなるとコストが膨れ上がりいくら予算があっても足らず、工期中に入居者へ与える影響も大きくなってしまいます。
特に、大規模修繕の際には劣化している箇所を調べて、本当に修繕が必要な箇所はどこか現状把握を行うことが非常に重要です。必要な工事を見極めることで、必要のない費用を抑えることも可能です。
とはいえ施工業者や管理会社の無料の劣化診断は目視のみです。設計事務所やマンション管理士の有資格者などに診断してもらうと正確でしょう。劣化診断の費用は総戸数によって費用が変わってきます。
マンションの大規模修繕時の劣化診断については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
2.マンションやビルの大規模修繕の基本的な周期を知る
大規模修繕のタイミングによっては必要な工事が変わってくることもあるでしょう。大規模修繕の周期を知る事もまた大切です。マンションやビルの大規模修繕は定期的に大規模修繕を行う必要があります。周期は法律で明確に決まっているわけではありませんが、国土交通省が発行している『長期修繕計画作成ガイドライン』の中では、「外壁の塗装や屋上防水工事などを行う大規模修繕工事の周期が12年程度」というように奨励されています。
外壁の塗料や防水材などは新築後10年経過すると劣化しはじめるため、12~15年の周期で大規模修繕を行う必要があるのです。ただし、今は建築技術が向上してきたため、実際には大規模修繕の平均的な周期は16年となっています。
大規模修繕の周期について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
3.マンションの改修工事(グレードアップ)は2回目の大規模修繕から実施?
1回目の大規模修繕での、改修工事はそれほど必要ないケースが多いです。しかし、2回目の大規模修繕の時期ともなると建設から約24~30年が経過しており、通常の修繕工事を行うべき箇所の劣化だけでなく、設備面の古さなども目立ってきます。そのため、単に修繕工事を行って新築当時と同じようにするだけではなく、改修工事でグレードアップを図るのも良いでしょう。
特に耐震補強やバリアフリー設備、セキュリティ、防水工事を行うことで、入居者満足度向上につながります。
改修工事を行うことで、建物の安全性や機能性が高まり、入居者が安心して暮らせる。建物の利便性が向上する。資産価値を維持または向上が見込める。入居者が集まりやすくなるといったさまざまなメリットから良い循環につながります。改修工事は、補修などに比べコストはかかかりますが、投資と捉えて積極的に検討してみるのも良いでしょう。
以下の記事では大規模修繕時に改修工事を行うメリットや工事の内容について解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
まとめ
修繕、補修、改良、改修。いずれも既存のマンションに手を加える工事であることは共通していますが、それぞれ目的や施工内容が異なります。マンションの状態や築年数などから、今どのような工事が必要なのかを一度考えてみましょう。
特にどの箇所にどういった工事を行うことが最適なのかを認識することで後悔のない選択に繋がり、結果として無駄な費用を支払うことがなくなります。建物の診断を行い、必要かどうかをしっかりと判断することが重要です。今後も見据えて、マンションの資産価値を維持するだけではなく高める方法についても考えてみてはいかがでしょうか。
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