マンションの大規模修繕工事のうち、実に4割以上の工事で追加費用がかかるといわれています。なぜ事前に調査・見積もりをしているのにも関わらず追加で費用を請求されることになってしまうのでしょうか?また、予算が不足しないようにするためにはどうすればいいのでしょうか?
この記事では大規模修繕を控えているマンションの管理組合の方向けに、追加費用が発生する理由と対策について解説します。工事が終わってから追加費用を請求されて焦らないためにも、ぜひ最後までお読みください。
大規模修繕工事の4割以上が追加費用が発生している!
マンションの管理組合の理事にとっては、大規模修繕の費用が予算内に収まるかどうかも大きな心配事といえます。見積もりの段階では予算内に収まっていたのに、後から追加費用を請求されて工事費が膨れ上がってしまったとなれば大変なことになります。しかし、意外とこうしたケースは多いのです。
工事金額の精算傾向
(実数精算方式を採用している48社を対象とし単一回答)
工事契約金額から追加精算になることが多い | 21 | 43.8% |
---|---|---|
工事契約金額とほぼ同額の精算になることが多い | 12 | 25% |
工事契約金額から減額精算になることが多い | 12 | 25% |
不明 | 3 | 6.2% |
計 | 48(社) | 100% |
(出典:マンションの大規模修繕工事における 工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果より)
公益財団法人マンション管理センターがマンションの大規模工事を行っている施工業者48社に対して調査を行ったところ、43.8%が「工事金額から追加精算になることが多い」と回答しています。もちろん、こうした回答をした会社でもすべての工事で追加費用がかかるとは限りません。しかし、追加費用がかかってしまう確率はかなり高いといえます。
追加費用が発生する5つの原因
追加費用がかかるというと「ボッタクリではないか」「騙しているのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに本来必要でない工事を行ったり、安く見せかけて受注したりするような、悪意をもった業者も一部には存在します。
しかし、やむを得ない事情で追加費用が発生するケースがほとんどなのです。
工事前に建物の劣化状態を完全に見極めるのは容易ではありません。施工をしていてはじめて不具合が発覚することも多々あります。また、施工中に自然災害が発生してしまったケース、管理組合から追加工事の要望があったケースなども追加費用が発生する要因です。大規模修繕工事で追加費用が必要となる原因について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.タイルが想定枚数よりも増加した
費用追加の原因としてもっとも多いのはタイルの枚数増加です。もちろん、見積もり時には必要になるタイルの枚数を想定した上で金額を算出するのですが、「実際に何枚必要か?」という正確な枚数はわかりません。
施工してみると、想定よりもタイルが多く必要となって、追加費用がかかってしまうケースも多いのです。ちなみにほとんどの施工業者が「実数生産方式」という計算方法で精算します。これに関しては後ほど詳しくご説明します。
2.内部の劣化が想定以上に激しかった
建物の内部の劣化度合いに関しても、見積もり時に外から見ただけではなかなかわからないのが実情です。実際に施工してみてはじめて外壁のひび割れや破損具合がひどい箇所が見つかった、内部の鉄筋が錆びていた、配管が傷んでいたなどの劣化が発覚することも多くあります。
外壁の場合はひび割れ補修やモルタル補修、鉄筋の場合は鉄筋発錆部補修、配管の場合は交換作業が必要となり、その分だけ費用が増加してしまうのです。
3.足場設置の難易度が想定以上だった
マンションの大規模修繕の際には、まず建物を囲うように足場を設置します。設置場所が狭かったり状態が悪かったりすると事前の計画とは異なる方法で足場を設置しなければならないため、やはり追加費用がかかってしまいます。
また、足場が設置できない箇所があると通常とは別の方法で工事を行わなければなりません。そういったケースでも追加費用が発生することがあります。
4.自然災害が発生した
工事期間中に台風などの災害による被害に遭って追加費用が発生するケースもあります。たとえば強風で足場や外壁の一部が破損してしまった場合、補修するために費用がかかってしまいます。
自然災害によって追加費用が発生した場合は保険が適用できる可能性もありますので、施工業者や保険会社に確認してみましょう。
5.管理組合からの要望
以上のような事情に加えて、管理組合からの追加工事の要望で施工した場合でも追加費用がかかります。
たとえば段差をなくしたり手すりをつけたりするなどのバリアフリー対策、太陽光発電設備の設置といった省エネ対策、オートロックや監視カメラの設置などの防犯対策といったマンションのアップグレード工事を大規模修繕の際に行うケースも多いです。
工事請負契約で変わる追加費用の負担
以上のようなさまざまな要因によってマンションの大規模修繕工事で追加費用がかかることがあります。繰り返しになりますが、調査・見積もり段階で特に高層階の外壁や内部の劣化など建物の劣化度合いを完全に把握するのは困難です。実際に施工に入ってはじめてわかることも少なくありません。
大規模修繕工事を行う際には「実数精算方式」もしくは「責任数量方式」という精算方法で工事請負契約を締結しますが、どちらの方法で精算するのかに着目しましょう。前出の『マンションの大規模修繕工事における 工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果』によると、81%と圧倒的多数の施工業者が実数精算方式を採用しています。以下でそれぞれの精算方式について詳しく見ていきましょう。
追加負担が発生する実数精算方式
実数精算方式とは工事の前に仮で工事費用を算出して見積もりを出し、工事が終わった後に実際に必要となった正確な費用を算出して精算する方法です。
実数精算方式の場合は、行った施工の内容やかかった経費などにもとづいて金額が算出されるので、施工業者が過剰に利益を得るようなことがない、つまり管理組合としては無駄な出費が抑えられるという点がメリットといえます。追加費用=ぼったくりというイメージがあるかもしれませんが、実際にはやむを得ない事情で追加工事を行うケースがほとんどです。逆に想定よりも工数が少なく済んだ、資材が必要なかったという場合は、当初の見積もりよりも精算額のほうが安くなるケースもあります。
一方で、正確な工事費用がわかりにくいというのがデメリットです。工事費用が見積もりよりも安くなる場合もあるのですが、実際のところは追加費用がかかってしまうケースのほうが多い傾向があります。費用が不透明であるため総会で承認が得にくい、追加費用が発生することで予算超過してしまう可能性があるなど、管理組合としては頭を悩ませる要素を多分に含んでいます。
追加負担が発生しない責任数量方式
責任数量方式とは施工業者の責任において数量を設定して工事金額を決める方式です。たとえ見積もり時に想定していた工事数量よりも実際の数量が多かったとしても、その分の費用は施工業者が負担するため、見積もり時に提示した料金と請求料金に違いが出ることはありません。
上記のことから、追加費用が発生せず、管理組合側には総会で了承が通りやすくなる、予算超過のリスクが低減できるなどのメリットがあります。一方で、当初予定の工事数量よりも実際の工事数量が少なかったとしても、請求額は安くならない点には注意が必要です。
施工業者にとっては工事数量が想定よりも多かった場合は損を被ってしまうため非常にリスクが高い方式であり、採用している業者は11%に留まります。また、責任数量方式を採用している会社は、工事数量が多くなることを見越して想定よりも少し高めの金額を見積もるケースがあります。そのため、追加費用がかかりうる実数精算方式よりもかえって割高になってしまう可能性もあります。
追加費用が発生したときの対策
大規模修繕で追加費用がかかるケースは珍しくはありません。管理組合としてもその可能性を想定しておくことが大切です。ここからは大規模修繕工事の追加費用対策について考えていきましょう。
修繕費用に予備費を確保しておく
大規模修繕工事の予算を決める際には、追加費用が発生した場合に備えて予備費を確保しておきましょう。前述の『マンションの大規模修繕工事における 工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果』では、大規模修繕の発注者支援業務を行うコンサルタントに対するアンケート調査結果も掲載されており、87%のコンサルタントが管理組合に対して予備費を盛り込むようアドバイスしているという結果が出ています。また、予備費の額としては請負工事金額の多寡によって決めているケースが多く、およそ工事費用の10%程度を予備費として計上するよう助言しているコンサルタントが多いようです。
ただし、他にも工事の内容や修繕積立金の状況などによって適正な金額は変わってきますので、コンサルタントがいるのであれば相談してみましょう。
なお、施工業者としては追加費用が発生した場合、半数以上が予備費内で収まるよう対応しているということです。ただし、やはり著しい劣化や不具合が発生した場合は予備費すらも超過してしまうことになり、その際にはどうしても予算を追加しなければならないことになります。追加工事が必要になった際には、しっかりと予算と予備費についても施工業者と共有し、工事内容を相談することが大切です。
不要な追加費用を防ぐには優良業者への依頼が不可欠
大規模修繕の追加費用の発生を避けるためには、優良施工業者を選ぶことが大切です。信頼がおける業者であれば予備費を設定するようアドバイスしてくれ、仮に追加工事が必要になった場合であっても予備費内で収まるように対応してくれます。
また、いい加減な調査・見積もりをされてしまえば、追加費用がかかる可能性も高くなります。技術力が高い、あるいは誠実な仕事をしてくれる業者であれば見積もりの精度が高いので、追加費用を請求される確率は格段に低くなるはずです。
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正確な見積もりができる理由については、以下のページもご覧ください。
建物のドローン診断 – 神奈川・横浜の大規模修繕工事|株式会社RYU-SHIN
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