劣化したマンションの外壁を補修することで、新築時に近い性能を回復させ、資産価値の低下を防ぎ、マンションの美観を保つ効果があります。本コラムでは、マンションの外壁が劣化する主な原因や鉄部補修を行うメリットに加え、外壁素材の主な種類と特徴、工法別外壁補修工事の種類と費用の目安などを解説します。
マンションには、階段やベランダの手すり、エレベーターの扉など、鉄でできた鉄部が多く使われています。この鉄部には塗装が施されており、錆びの発生を防いでいますが、塗装に使用される塗料の多くは、錆びの保護機能は5年程度となっているため、その周期に合わせた鉄部塗装工事が必要です。
その鉄部塗装工事を怠ってマンションの至るところに錆びが発生するようになってしまえば、マンションの美観が損なわれ、資産価値も下がるようになります。他の外壁塗装と違い、プロのノウハウが必要な部分である鉄部塗装について、本コラムで紹介します。
鉄部塗装の基本知識をわかりやすく解説
マンションを大規模修繕する際に、必ずと言っていいほど組み込まれるのが外壁塗装です。その中でも、建物の階段やベランダの手すり、エレベーターの開閉扉、屋上の脱気筒、消火栓ボックスなど、多くは鉄製の材料が使われている箇所への鉄部塗装は、外壁塗装とは分けて補修方法や工程を考えた方が良いでしょう。
また、これらの鉄部はマンションの耐久性にも関わる重要な部分ですから、劣化しないためにも鉄塗装の知識を持つプロのノウハウが必要です。まずは鉄部の基礎知識からお伝えします。
鉄部塗装とは?一般的な外壁塗装との違い
マンションにおける以下のような箇所の多くには鉄が使われています。
- ・外階段
- ・非常階段の扉
- ・玄関扉
- ・エレベーターの開閉扉や外枠
- ・ベランダの手すり
- ・給水管
- ・メーターボックス
- ・駐輪場や駐車場 など
これらは鉄部と呼ばれ、マンションを大規模修繕するときには鉄部塗装工事をする必要があります。外壁の劣化部分を補修し新たな塗料を塗装する外壁塗装に対し、水や酸素に触れると錆びが発生する鉄部には、鉄を保護し錆を防ぐ塗料を塗布する必要があります。
また、これらの鉄部は、マンションの共用部分に多く使われています。いずれにせよ、個人で勝手に鉄部塗装の補修や修理工事を行うことはできません。管理会社に依頼をして、鉄部塗装ができる業者に依頼する必要があります。
外壁塗装や屋根における鉄部の役割と重要性
マンションの鉄部が劣化してしまうと、ひび割れや剥がれから錆が発生し、そのマンションに対して汚くみすぼらしいイメージを持たれるようになります。また、鉄部が劣化し、汚くみすぼらしいマンションに見られてしまうことは資産価値にも影響を与えます。
鉄部の劣化はそれだけではありません。マンションの美観を損なうだけではなく、住人の安全性にも問題が生じることになります。手すりや非常階段などに錆や腐食が発生してしまえば、強度が落ちてしまいますし、防火扉やエレベーターなどの劣化も安全性に関わってきます。
鉄部の錆止め塗装が必要な理由
鉄部塗装をする際には、錆止めを行うことが必須です。鉄が酸素や水分と反応すると錆が発生しますが、鉄部が錆びることで強度や美観に悪影響を与えるのです。その錆を防ぐためには、鉄部へ錆止め塗装することが重要です。
この錆止め塗装は錆の発生を防ぐだけでなく、鉄部の美観を保つ効果もあります。錆止め塗装には、それだけでなく、錆の進行を遅らせることもできます。鉄部に錆を発生させないことで耐久性が向上して、マンション自体の安全性も保たれます。
鉄部塗装の工程と作業のポイント
鉄部塗装の基本的な工程
鉄部塗装の大まかな流れは以下のとおりです。
・養生
施工しない箇所が汚れないよう養生を行う
・ケレン
素地調整のために、下地の状態に合わせて錆落としを行う
・錆止め
錆止めの塗料をローラーや刷毛で塗布する
・中塗り
仕上げとなる塗料をローラーや刷毛で塗布する
・上塗り
再度、仕上げとなる塗料をローラーや刷毛で塗布する
※工事の仕様や使用材料により、工程が異なる場合もあります。
塗装後の耐久性の決め手となるケレン作業
グレード | 錆の面積(錆がなく、割れ、はがれ、膨れ等の塗膜異常がある面積) | 作業方法 | 作業目的 |
---|---|---|---|
1種 | ー(ー) | ブラスト法(古い塗膜やサビを除去すると同時に研磨剤を高速で吹き付けし、表面を加工する方法) | 黒皮、赤錆、旧塗膜を完全に除去 |
2種 | 30%以上(ー) | ワイヤーブラシや電動工具を用いる | 赤錆・旧塗膜を除去し、鋼面を露出させる ※完全な除去は難しい |
3種 | A:15〜30%(30%以上) | 赤錆と劣化塗膜を除去し、鋼面を露出させる ※活膜(保護膜として機能している旧塗膜)は残す |
|
B:5〜15%(15〜30%) | |||
C:5%以下(5~15%) | |||
4種 | ー(5%以下) | 白亜化(チョーキング)で生じた粉化物や汚れを除去 ※活膜は残す |
「ケレン」とは、鉄部を塗装する前に行う下地処理のことです。「剥がれている塗膜や汚れを落として下地をきれいにする」という元々の意味が転じて、「鉄部の下地処理」を意味するようになりました。
この「ケレン」をおろそかにすると、鉄部へ錆が浮き上がり、さらに錆が広がってしまうという悪循環に陥るようになります。
なお「ケレン」は、作業の内容や方法に応じて1種から4種までグレードが分かれています。その中でも、錆や旧塗膜を完全に除去して鋼材面を露出させる「1種ケレン」が、もっとも効果が優れています。
鉄部塗装の塗替えをする際には、施主側が「ケレン」の種類を指定して発注しますが、施主によってはケレンの定義が異なる場合があり、それには注意を要します。
下地処理と錆止め塗料の選択
鉄部塗装には下地処理が重要であり、「ケレン」作業によって品質や耐久性に大きな影響を与えます。鉄部塗装の下地処理に不備があると、以下のように劣化することが懸念されます。
- ・ひび割れや錆の再発
- ・塗膜の剥離や膨れ
なお、錆止め塗料は、防錆効果は高いが乾燥が遅い1種と、防錆性は1種に劣るものの、乾燥が速く作業性が高い2種という2つに分かれます。錆止め塗料を2回塗りする場合には、1回目、2回目とも1種を使いたいと思うかもしれませんが、製品の移動・運搬にともなう傷の補修の意味もある2回目は、施工性を考慮して2種を使うことが一般的です。日本建築学会の鉄骨工事技術指針でも、「錆止め塗装を2回塗りする場合には、1種を1回目に、2種を2回目に使用する」とされています。
塗装工程と仕上げに関する注意点
マンション管理組合側や住民側は、鉄部塗装工事前や工事中に以下のポイントについてチェックをするようにしましょう。
使用材料の耐久年数は長期修繕計画に合っているかどうか
マンションの長期修繕計画に合った材料が選定されているかどうか。使用する材料の耐久年数を施工会社に確認するほか、メーカーのカタログなどで調べ、現在想定されている修繕周期に対して適切かを確認します。
錆止め塗装をせずに中塗りや上塗りを施工していないかどうか
錆止め塗装をせずに中塗りや上塗りを施工していないか確認します。また、下塗りをしていても、使用している下塗り塗料に錆止め効果があるかも確認しましょう。
きちんと「ケレン」が行われているかどうか
鉄部塗装工事では、塗装前の「ケレン」が耐久性や仕上がりに大きく影響します。そこで、きちんと「ケレン」がされているかどうか、塗装前に確認をしましょう。
決められた塗布量が守られているかどうか
塗料は、種類によって、メーカーで標準使用量が決められていますので、適正な塗布量で塗装をすることで、塗料の持つ耐久性能を十分に発揮できるようになります。塗料を余分に使用して水増し請求をしていないか、逆に過小に使用して塗料の持つ耐久性能が損なわれていないか、確認しましょう。なお、決められた塗布量が守られているかどうかは、塗布量試験を通して確認できます。
鉄部塗装に適した塗料の種類と選び方
鉄部塗装は大きく言って、錆止め塗料と、中塗り・上塗り塗料の2種類に分かれます。錆止め塗料は金属の腐食を防ぐ効果のある塗料を下塗りに用いるものです。中塗り塗料は主に防錆性を高めることが目的で、上塗り塗料は耐候性や耐久性を高めることが目的の最後の工程を担うものであり、併せて中塗り・上塗り塗料と呼んでいます。
特に、海沿い地域のマンションの場合、この錆止め塗料の使用が非常に重要となってきます。
また、鉄部塗装に適した仕上げ塗料には、主にウレタン塗料、シリコン塗料、フッ素塗料の3種類があります。いずれも安価なアクリル塗料より耐久性が高いとされています。これらの仕上げ塗料に対して錆止め塗料を選ぶ際には、仕上げ塗装の色との相性も重要です。
エポキシ樹脂塗料とその特徴
錆止め塗料の一つであるエポキシ樹脂塗装は、エポキシ樹脂を基にする塗料を使用する塗料のことであり、「プラスチック素材」とほぼ同義語となっています。このエポキシ樹脂塗料は硬化するとはがれにくくなり、耐薬品性や耐水性に優れた塗膜を形成することから錆止め塗料に適しています。また、防水性や耐薬品性に優れていることから、過酷な環境下における塗料としても最適です。
エポキシ樹脂塗料は、その性質の高さから用途は幅広く、屋外鉄部の下塗り塗料や水道管の内面コーティング、防錆鉄筋などに使用されています。
ただ、紫外線に弱く、靱性(材料の粘り強さ)が低く、低温下での硬化が遅いといったデメリットも持っています。そこで、エポキシ塗装の鉄部で使用する場合は、できるだけ太陽光に直接晒さない箇所にすることが重要です。
ウレタン塗料と変性エポキシの違い
ウレタン塗料と変性エポキシ塗料は、錆止め塗料として、よく使用されます。ウレタン樹脂には柔軟性があり、鉄部との密着度が高く、艶のある塗料です。変性エポキシ塗料は、変性により2液ではなく1液での使用が可能となっており、硬化剤を混合する必要がないため使用が簡単です。
また、ウレタン塗料には耐久性を上げるために溶剤が含まれていますので、ペンキのような臭いを発します。そのため、使用時にはマスクをするなどの注意が必要です。変性エポキシ塗料は、建築用途や防食用途など、高い耐久性や特定の条件下での性能が求められる場所で有効です。2液型のエポキシ樹脂塗料と比べ、変性エポキシ塗料は1液型ですので、取り扱いが簡単となり塗装作業性が向上します。
7つある塗料のグレードと費用の目安
外壁用の塗料は、耐久性や価格によって、以下のような7つのグレードに分類されます。
それぞれのグレードの大きな違いは耐用年数です。同時に、耐用年数が長くなれば価格も高くなります。例えば、クレードがもっとも高い「無機」の耐用年数は16~20年であり、単価は1㎡あたり4,000円~4,500円となっています。逆に、もっともグレードが低い「アクリル」の耐用年数は4~5年であり、単価は1㎡あたり900~1,200円となっています。
鉄部塗装の劣化防止とメンテナンス
どんなにキレイにしているマンションでも、経年劣化とともに共有部分の鉄部に錆が発生してしまいます。錆が発生すると劣化が進行してしまいますので、鉄部塗装の劣化防止として定期的な点検とメンテナンスが重要です。そこで本項目では、メンテナンスが必要な劣化サインのチェックポイントについてお伝えします。
塗膜の劣化サインと保護方法
鉄部に塗膜の色あせや剥がれ、ひび割れ、チョーキング(粉吹き)、錆などが現れたときには、それが塗膜の劣化サインです。このような兆候が見られたときには、鉄部の塗り替えを検討する時期に来たといえます。
塗膜の剥がれなど
鉄部に施されている塗装は経年劣化をして徐々に剥がれてきます。そうなると鉄部がむき出しになるようになり、そのまま放置していると、さらに劣化が進んでいきます。
錆
むき出しになった鉄部が雨や空気中の酸素にさらされていることで徐々に錆びていきます。錆が一度発生してしまうと広範囲に広がっていくため、鉄部全体の見た目や耐久性にも影響が出てきます。
5年ごとの点検と周期的な補修し
このような劣化サインが現れた鉄部は塗装し直す時期が来ているといえます。劣化サインが現れているか、いないに関わらず、5~10年を目安に塗り直す必要があります。鉄部の塗装が剥がれてしまうと素地がダメージを受けてしまうので、できれば色あせやチョーキングといった初期症状の段階である5年ぐらいごとに点検とメンテナンスを行うことをおすすめします。
長持ちさせるためには環境対策も必要
鉄部は水分や酸素に触れて酸化することで錆びます。空気中にも酸素と水分が含まれているため、鉄などの金属は、何もせずとも酸化し錆びていきます。さらに、雨風にさらされ続けると錆びやすいので、湿度の高い梅雨時期には、さらなる注意が必要です。
また、塩化物や硫黄などを含んでいる排ガスやほこり、汚れによっても酸化が促進されますので、車が多く通る道路の近くに面しているマンションなどでは、鉄部を長持ちさせるためには環境対策も重要です。
まとめ:鉄部塗装の実績豊富な業者とじっくりご相談を
マンションを大規模修繕する際に、必ずといっていいほど組み込まれるのが外壁塗装です。その中でも、建物の階段やベランダの手すり、エレベーターの開閉扉、屋上の脱気筒、消火栓ボックスなど、多くは鉄による材料が使われている箇所への鉄部塗装は、外壁塗装とは分けて補修方法や工程を考えます。
これらの鉄部はマンションの耐久性にも関わる重要な部分ですから、劣化させないためにも鉄部塗装の知識を持つプロのノウハウが必要です。RYU-SHINは鉄部工事の事例や実績を豊富に保有しています。鉄部塗装工事にお困りの方からの無料のご相談・お見積りをお待ちしています。
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