少し前にタワーマンションブームが巻き起こりましたが、築年数が経ってマンションが老朽化したときに、いったい何が起こるのかご存知でしょうか?
これはマンションに住んでいる人や、マンション購入を考えている人なら、必ず知っておきたい重要な事柄です。
この記事を読むと、マンションの劣化によってどんなトラブルが起こり得るのか、そのときにどんな対策を取るべきなのかが理解できるようになります。
ぜひ読んで、大切なマンションを老朽化から守るために、お役立てください!
マンションが老朽化すると何が起こるのか
設備の劣化
マンションが老朽化すると、当然ながら設備の劣化が進みます。
マンションの平均寿命は60~70年ほどですが、たとえば「外壁」のコンクリートは、年数が経つにつれてひびが入り始め、それを放置しておくと雨漏りの原因になります。
これによってマンションの重要な躯体である鉄筋にもサビが生じ、耐震性にも問題が生じます。また、マンションの寿命を左右すると言ってもいい「配管」も、年数を経るとともに老朽化していきます。
それ以外にも、屋上の防水シートや廊下の床・手すり・階段、バルコニーや玄関ドアなど、建物のさまざまな箇所の老朽化が進んでいきます。
しかしマンションの売り手側は、物件を販売することが目的なので、買い手が購入する時点ではこれらのリスクをあまり話したがりません。
管理費や修繕積立金についても、できるだけ販売しやすくするために、本来必要な金額以下に設定しているケースが数多くあります。
そのため、適正な時期に多額の費用をかけて大規模修繕を行わないといけないにもかかわらず、それができずに劣化が進んでいるマンションもあるのが現実なのです。
また、タワーマンションの場合は建材や工法が斬新な建物も多く、高層階の外壁工事が困難を極めることもあって、多額の工事費用が発生します。
しかしタワーマンション所有者の中には、投資目的で購入した人も多いため、管理費や積立金を払わない人もいて、大規模修繕が暗礁に乗り上げているケースも少なくありません。
給排水管劣化による水漏れ
マンション設備の劣化として、給排水管の劣化がもっとも起きやすい問題です。
給排水管の劣化は、室内への水漏れの原因となり得ます。加えて1つの部屋だけでなく、同じ時期にいくつもの部屋で水漏れが起きる可能性が高いので、多くの住民が同時期に同じトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
なお、給排水管の劣化の原因としては経年劣化もありますが、古いマンションであるほど、管に使用されている材質に耐久性が低い材質が使用されている可能性があり、これが原因となっている場合もあります。
外壁・内壁劣化により欠け・ひび割れの発生
マンションの老朽化が進むと外壁コンクリートのひび割れが起こってきます。このひび割れは、雨漏りにつながりますし、建物の劣化を進行させてしまいます。
特に外壁タイルが劣化した場合、壁面との接着力が低下して、タイル落下する可能性もあるので大変危険になることがあります。
エレベーターや防犯システム・分電盤などその他の設備でも不具合が発生する
老朽化が進むとエレベーターや防犯システムなど、マンション施設にも不具合が起きるようになります。
エレベーターが老朽化することで消耗品部分に負荷がかかり、エレベーター内への閉じ込めや落下事故などのトラブルに発展する可能性もあります。古い設備のメンテナンスを怠ることは、大変危険であるわけです。
また、マンション全体の電気を管理する分電盤の老朽化が進むことで、分電盤がある場所が害虫の巣になってしまうことや、さびが発生し、使い続けることで、ショートや漏電などによる火災が発生するリスクが高まります。
これらの設備不良は、マンション全体で実施する大規模修繕で解決できる可能性が高いものです。
資産価値の低下
こうした諸事情によって、マンションの適切なメンテナンスが行われなかった場合には、資産価値が次第に低下していくことになります。
外壁のコンクリートはひび割れだらけになり、塗装も色褪せ、一見して「手入れの行き届いていない、古いマンション」とわかります。
メンテナンスを怠ることで、漏水や漏電などのリスクも増え、日々の生活への不安も生まれてくるでしょう。
やがてそんな生活に見切りつけた居住者はマンションを去り、居住者離れが進んで、空室率が増加していきます。それによって管理費や修繕積立金が回収できなくなり、ますます負のスパイラルが進んでいくのです。
マンションの空室率が3割以上になると、管理組合は成り立たなくなります。
そしてそこから先は、スラム化への道をたどったとしても、止めようがありません。
管理費・修繕費の増加
自分の住むマンションが、このような負の連鎖を生まないようにするためには、いったいどうしたらいいのでしょうか?
マンションの資産価値を末永く保つためには、何とかして大規模修繕の費用を捻出し、定期的なメンテナンスを行わなければなりません。
そのためには、管理費や修繕積立金を値上げする必要があります。
マンションを所有している人には大変残念な話ですが、多くのマンションが築年数の増加につれて、管理費や修繕積立金の値上げに踏み切っています。
増加の割合はマンションによってまちまちですが、そもそも当初の金額設定が低過ぎるので、値上げは必至と思っておいた方がいいでしょう。
5年ごとのタイミングや、大規模修繕工事前後のタイミングで金額の見直しを行うケースが多く、マンションによっては大規模修繕前に「一時金」という形で各世帯から修繕費用を集める場合もあります。
管理費・修繕積立金の値上げや、一時金の徴収の際には、住民からの強い反対があることは間違いないでしょう。
実際、長い期間話し合いを重ねても、なかなか値上げの話がまとまらないマンションも少なくありません。
「マンションを購入するときに、諸経費が値上がりするなんて思ってもいなかった。ローンの返済だけで手一杯で、今後増額されたら払い続ける余裕がない」と言う人もいますし、若いファミリーや投資目的のオーナーの中には、とにかくお金を払いたくなくて反対する人もいるでしょう。
確かに管理費や修繕積立金の値上げは、住民の家計に大きな影響を与えます。
しかしマンションに住む人にとって、これは避けて通れない問題でもあります。
もし大規模修繕に必要な金額が集まらない場合は、マンションの老朽化が進むことによって、それ以上の痛手を受けることは間違いありません。
どちらが賢明な選択なのか、管理組合で真剣に検討することが大切です。
地震発生時の安全面に不安が生じる
1981年6月に耐震基準が改正され、「新耐震基準」が施行されました。これより古いマンションは「旧耐震基準」に基づいた建物であり、地震発生時の安全面に不安があります。
ただ必ずしも「新耐震基準に基づいたマンションだから安心」「旧耐震基準のマンションだから危険」というわけではありません。建物の構造や管理・メンテナンス状況はマンションごとに異なります。そこで、耐震基準に対する知識を持ちながら、物件ごとに見極めていくことが大切です。
特に老朽化して各設備に不具合が発生しているようなマンションであれば注意する必要があります。
老朽化を事前に防ぐために重要なこと
老朽化を事前に防ぐためには、マンションの状態確認や点検などに対する適切な管理と、定期的な改修・リフォームが重要です。そのうえで、建物の日々の管理や点検、問題点が見つかった際の速やかな補修などをその都度行い、老朽化に発展しないよう努めるようにしましょう。
建物の管理では、明確な修繕計画を事前に作っておくことが重要です。建物が古くなる前の段階で長期修繕計画を策定し、老朽化のリスクを想定して実施していきましょう。
管理が最適化されているマンションは、建て替えなくてもリフォームやリノベーションでより長く快適に暮らしていくことが可能です。マンションを解体して建て替える必要がないリフォームであれば、建て替えよりも短期間で改修を行うことが可能です。
マンションが老朽化してきたときの対策
大規模修繕による改修
では、マンションが老朽化してきた場合には、いったいどのような対策を取ればいいのでしょうか?マンションの老朽化対策として最も多いのが、大規模修繕工事による改修です。
大規模修繕工事は、マンションの資産価値や安全性を維持するために、欠かせない工事です。
大規模修繕を行うことによって、マンション内の老朽化した箇所を補修・修繕でき、住みやすい生活環境に整えることができます。
具体的には、マンション内で経年劣化している部材を新品と交換したり、外壁のひび割れを修繕して塗装し直したり、床や屋根の防水工事を行ったりといった形です。
築年数が進めば、給排水管の交換工事や、時代に合わせた共用部の改修工事なども必要になってくるでしょう。
国土交通省のガイドラインでも、分譲マンションは12年程度の周期で大規模修繕を行うことを推奨しています。
「1回目は外壁が中心」「2回目は建物の内部が中心」「3回目は耐震補強や省エネ化が中心」といったように、築年数に応じて異なる箇所を修繕するのが、一般的な方法です。マンションの資産価値を保ちたいなら、できるだけ12年周期に近いタイミングで行うのが理想的です。
築年数の経ったマンションの中には、築20年近く経って初めて大規模修繕を行うケースもありますが、それはお勧めできません。
マンションの資産価値を保ちたいなら、できるだけ12年周期に近いタイミングで行うのが理想的です。
たとえタイミングを逸してしまった場合でも、今から大規模修繕を行うことによって、快適に住み続けることは可能です。
まずは建物の劣化診断を適切に行い、マンションがどの程度老朽化しているのかを、しっかりと把握する必要があります。
「RYU-SHIN」は大規模修繕の豊富な工事実績を持ち、管理組合や住民の皆様が安心して工事を進められるよう、充実した保証内容で対応しております。
こちらの記事では、マンション大規模修繕の費用と流れ、注意ポイントについて説明しています。ぜひご覧ください。
マンションを解体して建て替える
老朽化がかなり進んでいて、大規模修繕工事を行っても改善が難しい場合には、「マンション自体を建て替える」という方法もあります。
建物を解体して新しいマンションを建てることで、住環境は格段にアップし、住み慣れた場所に長く住み続けることができるでしょう。
ただし、実際に建て替えを実現しているマンションの数は、けっして多くはありません。2021年3月の時点で、建て替え工事が完了しているマンションの数は、わずか263戸。
日本国内の分譲マンションのストックが約675.3万戸(2020年末時点)ですので、全体の1%にさえ届きません。
建て替えを行うためには、区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要になってきます。
莫大な費用と労力がかかることから、大規模修繕以上に反対意見も多くなるので、管理組合としては相当の覚悟と努力が必要でしょう。
マンションを土地・建物丸ごと売却する
老朽化したマンションを建物ごと売却するのは基本的には難しいといえます。ただし、明確な不具合が起きている箇所の修繕を行ったり、ハウスクリーニングを実施したりすることで売却できる可能性もあります。
なお、一括で購入できるような価格で売却される老朽化マンションは、賃貸住宅を借り続けるよりもお得だと判断されて、高齢者の住宅として選ばれやすいことがあります。
そのため、東京都内であれば売れる可能性が高いほか、近年では老朽化したマンションを不動産会社が積極的に買い取ってくれる場合があります。
敷地売却制度に頼る
建物を解体し、その敷地を売却することで、マンションの老朽化の問題を解決する方法もあります。
これは一見無難な方法にも見えますが、実はそうではありません。
マンションの解体・売却は建て替え以上に難しく、土地を売却するためには耐震性不足のマンションである認定や、区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。
長くそのマンションに住み続けてきた人は、解体・売却することで住む場所を失うため、おいそれと賛成側に回ることは難しいでしょう。
他にも所有者側のさまざまな事情がからみ、売却は困難を極めるので、かなりハードルの高い選択肢だと思った方が賢明です。
まとめ
マンションが老朽化すると、雨漏りや水漏れなどのトラブルが発生し、それによって見た目が古く見えるだけでなく、耐震性や居住性にも大きな影響を与えます。
資産価値が低下し、居住者の数が減ると負のスパイラルに陥って、将来的にスラム化してしまう危険もあるので、くれぐれも注意が必要です。
建物の老朽化が進まないよう、適切なタイミングで大規模修繕を行って、大切なマンションの資産価値を長く保つようにしましょう。
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