マンションに長年住み続けていると、次第に外壁の汚れが目立ってきたり、ひび割れが生じたり、タイルの一部が浮き出してきたりします。
このような状況を進行させないためには、適切な時期に外壁塗装工事を行う必要があります。ここでは、マンションの外壁塗装工事を行う目的や、工事費用の相場、塗り替えのサイクル、工事期間、工事の工程などについて解説しましょう。
マンションの外壁塗装工事はなぜ必要?
必要な理由①美観を保つ
マンションの美観を保つことは、資産価値にも直結します。資産価値については、マンション自体の価格を考えられるかもしれませんが、実際には塗装でマンションの価格が大きく変化するというわけではありません。ただ、美観を保つことはマンションに居住する人の住み心地に大きく影響します。
その結果、退去者を減らしマンションの空き家率を低めることになるため、資産価値を維持することになるのです。
必要な理由②建物の保護し、長持ちさせる
マンションの塗装工事は、建物を塗膜によって守り、寿命を伸ばしてあげるためにも重要です。塗膜とは、塗料を塗って乾燥させることでできる固定皮膜のこと。美観をアップさせるだけでなく、防水効果や遮熱・断熱効果、防汚・防カビ・抗菌効果などがあります。
建物は毎日雨や紫外線を浴びているため、塗膜は日々劣化しています。それを塗り替えもせずに放置してしまうと、雨漏りや下地の柱の腐食などの原因になるため、適切な時期の外壁塗装工事は欠かせません。
マンション外壁塗装工事にかかる費用はどのくらい?
マンション外壁塗装工事の費用相場と費用の内訳
マンションの外壁塗装工事にかかる費用は、外壁の劣化状況や使用する塗料の種類、塗装方法、付帯工事の有無、選定業者などによってかなり違ってきます。
たとえば塗装方法は、スプレーガンを使って「吹き付け塗装」を行うか、ローラーを使って「ローラー塗装」をするか、刷毛(はけ)を使った「刷毛塗装」にするかによって、費用が違ってきます。吹き付けにも2種類の方法があるので、それによっても費用が異なります。
一般的なマンションの外壁1平方メートルあたりの塗装の費用相場は、2,000円~6,000円ほどです。この他にも作業用の足場代や、塗料の飛散を防ぐ飛散防止ネットの費用、養生シートの設置費用、外壁塗装の前に汚れを落とす高圧洗浄費用、諸経費がかります。
大規模修繕工事の総額のうち、外壁関係の費用が占める割合は?
大規模修繕工事の総額のうち、外壁関係の費用はどのぐらいを占めているのでしょうか?国土交通省の『平成30年度マンション総合調査結果』によると、工事費用のうち24%を外壁関係が占め、続いて防水関係が22%、仮設工事が19.2%となっています。
外壁の塗装やタイルの補修、屋根や床の防水といった工事が、いかに大きな金額のかかる工事かがわかるでしょう。たとえば大規模修繕工事の総額が約3,000万円だとすると、外壁関係は720万円程度となることが予測されます。
マンション外壁塗装工事の塗り替えのサイクルはどのくらい?
マンションの外壁塗装工事は、大規模修繕工事の中の「改修工事」にあたります。改修工事とは、建物全体の性能を改善するための工事で、外壁塗装も大規模修繕の改修工事のサイクルに合わせて行うのがベストでしょう。
大規模修繕工事は、おおよそ13~16年の周期で行われています。そのため、外壁塗装もそのタイミング行うと良いのですが、鉄部の塗装に関しては5年に1度補修しておく必要があります。そうすることで、美しい外観を保つとともに、耐用年数もアップさせることができます。
屋上やベランダなどの防水塗装については、一番上のトップコートを5年に1回ほど補修しておくと、長持ちします。
こんなサインが出ていたら、外壁塗装工事が必要!
基本的な外壁塗装工事のタイミングをお伝えしましたが、建物の状態によっては、たとえ大規模修繕工事の計画前であっても、外壁塗装工事を行わなければならないケースもあります。
たとえば、雨漏りが発生していたり、鉄筋コンクリートが剥がれていたりする場合は、大規模修繕前でも外壁塗装が必要です。チョーキングの発生や、塗膜の剥離が見られたときも、外壁塗装をしなければ建物を長持ちさせることができません。
また、カビやコケ、藻が発生していたり、幅0.3㎜以上の幅のクラックが発生していたりしたときも、できるだけ早く外壁塗装の工事を行いましょう。
このようなサインが出ているのに、そのまま放置しておくと、マンションの資産価値を低下させてしまう可能性があります。「大規模修繕前に、余計な費用はかけたくない」と思うかもしれませんが、建物を劣化させないためにも、やっておくことをお勧めします。
塗料の種類と耐用年数は?
塗装の種類は、「アクリル塗料」「ウレタン塗料」「シリコン塗料」「フッ素塗料」などに分けられます。これらは有機塗料と呼ばれ、有機物(合成樹脂)を利用して作られていて、無機塗料に比べて価格も安く一般的に使われています。
アクリル塗料は、一般的にペンキと呼ばれているもので、耐久性が低いために外壁塗装にはあまり使われません。
ウレタン塗料は弾力性のある塗料で、モルタルや木材系の外壁に使われ、断熱材が入ったサイディングには向いていません。
シリコン塗料は乾くと塗膜が硬くなる性質があり、紫外線や熱、水によって経年劣化しにくい塗料です。ただし、ひび割れをしやすいというデメリットもあります。
フッ素塗料は、シリコンと同様で乾くと硬くなる、耐久性が高い塗料です。塗装が難しいので、職人さんを選ぶ必要があり、業者選びに注意が必要です。
耐用年数は、フッ素塗料が15~20年と最も長く、次いでシリコン塗料が8~15年、ウレタン塗料が6~10年、アクリル塗料が4~7年となります。ただし、耐用年数は建物の立地条件や気象条件によって異なるので、あくまで目安と考えておきましょう。
価格的にはどうかというと、価格も耐用年数が長いほど高くなります。フッ素塗料は1平米あたり3,600円~4,700円ですが、シリコン塗料は2,300~3,300円、ウレタン塗料は1,700~2,200円、アクリル塗料は1,000~1,500円と、かなり違います。そのため、最も多く使われているのは、コストパフォーマンスに優れたシリコン塗料です。
これらの有機塗料に対して、鉱物を材料として作られた無機塗料もあります、無機塗料とは、ガラスや石などの無機物が配合された塗料のことで、紫外線や太陽の光から外壁を守るので、汚れにくく劣化しづらいという特徴があります。
マンションの外壁塗装における塗料の色選びのコツ
外壁塗装の色はマンションの印象を決定づけ、ひいては入居者の集まりやすさを左右する重要な要素です。ここからは色選びの3つのコツを伝授しますので、ぜひ以下のことを意識して最適なものを考えてみてください。
それぞれの色の特徴と違いを理解する
まずは色の特徴や違いについて理解をしておきましょう。マンションに多いグレーや茶色系は無難で、汚れが目立ちにくいというメリットがあります。黒や白などのシックな色はおしゃれで今風ですが、汚れが目立ちやすいのがデメリットです。黄色やピンクなどの色は非常に個性的ですが、一歩間違えると奇抜な印象になり、周囲から浮いてしまいかえって入居者や近隣住民にマイナスイメージを持たれる可能性もあります。他にも多くの色を使いすぎると統一感がなくなってしまい、マイナス印象につながりかねません。
また、マンションは平面が多いので、天候によっては同じ色で統一しても違う色に見えてしまうといったこともあります。このように、色ごとの特徴やメリット・デメリット、マンション特有の見え方を理解した上で色を選ぶことが大切です。
材質との組み合わせを考慮して決める
塗料は塗装面の材質によって発色が異なる点にも注意が必要です。コンクリート素材の部分と木造の部分では、同じ塗料を使って塗装をしても見え方が違うことがあります。可能であれば、実際に塗装が終わった建物を業者に見せてもらうことで、発色の違いに関してもイメージがつかみやすくなります。
また、自分の好きな色だからと言って塗装をしてしまうと統一感がない配色になってしまうこともあります。実際に建っている建物や住宅のカタログなども見ながら素材との組み合わせを考え、「自分の好みの色がどのように見えるのか?」を考えることが大切です。業者によっては事前にシミュレーターで色のバランスを見ることもできます。
面積効果を考えて選ぶ
同じ色でも塗装面が大きい場合と小さい場合とでは印象が大きく異なります。色のサンプルを見せてもらいその時は納得したものの、実際にマンションに塗装をしたときに見るとイメージしたものとは全然違っていたということもよくあることです。
逆に理想のイメージとは若干違う色味を選んでも実際にマンションに塗ったときにはちょうどいいという場合もありますので、面積効果を考えて色を選ぶのは非常に重要となります。そのため、実際に塗装された建物を見てみるのが一番です。
外壁塗装工事の期間と工程は?
外壁塗装工事の期間は、マンションの建物の大きさや、使用する塗料の種類などによって、だいぶ違ってきます。工事の工期も季節によって変動するので、一概にこれぐらいとは言えません。
おおよその目安としては、50戸未満のマンションの外壁塗装工事にかかる期間が1~3ヶ月ほど、50戸以上のマンションは3~5ヶ月ほど、それ以上の大規模なマンションは半年以上かかると考えておいた方がいいでしょう。
マンションの外壁塗装工事の工程は、まず職人さんが作業をする足場を設置し、次に高圧洗浄機などで外壁を洗浄して、表面の汚れを落とします。
次に、ひび割れやサビなどがあれば補修し、外壁の下地処理を行います。下地処理が完了したら、塗料を塗った部分をビニールシートなどで覆い、養生をします。
そして、最後に外壁塗装を行います。外壁塗装は、基本的に下塗り・中塗り・上塗りの3度塗りを行い、外壁の状態によっては下塗りを何度か行ったり、上塗りの後に仕上げ塗装を行うケースもあります。塗装が終わり、外壁が乾燥したら、足場を解体・撤去して作業終了です。
マンションの外壁塗装で注意するべきポイント3選
マンションの外壁塗装は一歩間違うとクレームにつながったり予算をオーバーしてしまったりなどのトラブルが発生するリスクもあるため細心の注意が必要です。以下のようなことを意識して進めましょう。
居住者と近隣住民には必ず事前に告知しましょう
マンションの外壁工事は戸建てのそれよりも圧倒的に大規模です。足場の組み立てや解体、外壁の補修などで騒音や塗料の臭いが気になるといったクレームやトラブルも起こりやすいです。工期も長くなるため、周囲に影響を与える期間も長くなります。
マンションの外壁工事を開始する前には、マンションの入居者はもちろん、近隣住民に対してもあいさつ回りを行ってスケジュールの説明をし、工事に対して理解をしてもらうようにしましょう。
屋外に洗濯物を干せない場合も
外壁の洗浄や塗装を行う際には塗料や薬剤の臭いが強く感じられることがあります。窓が開けられない状態となり屋外に洗濯物を干せなくなってしまう可能性があり、クレームやトラブルの原因になりがちです。
事前に入居者に対して施工期間や各種工程について情報を共有し、「この期間は洗濯物が外に干せません」というように注意書きなどを行い周知をしましょう。あらかじめ対応することで大きな問題になることを防ぎます。
2色以上の塗装だと費用がかなり増える
2色以上の塗装を行うとその分手間が増えるため、どうしても工事費用は1色の場合と比較し上がります。「1色でも問題ないのではないか」「2色で塗り分ける必要性があるのか」を検討しましょう。
ただし、費用がかかってでもデザインにこだわりたい場合や必要性がある場合は、2色以上で塗装することは何の問題もありません。塗装の色については戦略的に検討しましょう。
失敗しないマンション外壁塗装業者の選び方
マンションの外壁塗装が成功するか、失敗するかを大きく左右するのが業者選びです。ここからは失敗しないマンション外壁塗装業者を選ぶ3つのポイントをご紹介します。
外壁診断・事前調査を丁寧に行うか
塗装の劣化具合や外壁の状態を調べる外壁診断・事前調査は工事の内容や費用を決める大切な工程であるため、丁寧に行う業者を選ぶべきです。ざっくりと見るだけで何の説明もないまま見積もりを作成する、劣化状況を正確に把握せずただ塗装作業を行うのみといった雑な業者も存在します。
外壁診断・事前調査を行った後に劣化状況や「どんな工事内容になるのか?」「何にいくらかかるのか?」を丁寧に説明してくれるもらえると安心です。
【相見積もりを取る】見積りの妥当性
業者から見積もり書を受け取った際にはきちんと明細が書かれているかどうかをチェックしましょう。外壁塗装には足場の組み立てや養生、下地処理など、さまざまな工程があり、それぞれに費用が発生します。「塗装代一式」ではなく、それぞれの項目ごとに費用が記載されているかを確認しましょう。
また、複数の業者から見積りを取る「相見積り」がおすすめです。相場感を掴むことができ、見積もり額が妥当であるかどうかを比較することができます。
実績の有無
マンションは一軒家とは違って塗装範囲が非常に広くなるため、仕上がりはもちろん施工管理や対応を含めてさまざまな事柄を考慮しながら進めていく必要があります。
実績や経験によって工事の質や進め方が異なるため、「これまでにどのような実績があるのか?」「マンションの外壁塗装の経験はどれくらいあるのか?」を確認されることをおすすめします。可能であればその業者が施工した物件を実際に見せてもらうと良いでしょう。
マンションの外壁塗装は、補助金の利用がおすすめ!
本記事ではマンションの外壁塗装の費用についてご紹介しました。
マンションの外壁塗装の際には補助金や助成金を活用されるのもおすすめです。都道府県や市区町村では公害防止や環境保護、防災、住民の満足度向上を目的として、さまざまな制度を用意しています。
条件や補助金・助成金制度の有無は自治体によって異なりますので、物件を所管する都道府県庁や市区町村役場のホームページで確認してみましょう。「大規模修繕がお得になる補助金の活用」でも補助金・助成金について詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
外壁の塗装工事は、マンションの大規模修繕工事の中でも最も費用のかかる工事です。しかし、マンションの美観を保ち、建物を長持ちさせて資産価値を高めるためには、欠かせない工事といえます。
外壁塗装工事を行うタイミングは、13~16年の周期で行われる大規模修繕の際に実施し、それ以外でも何らかのサインが出ていたときには、適宜塗り替えを行いましょう。
塗装の種類もさまざまあり、工事内容によって工期も変わってくるので、予算やスケジュールなどを踏まえてベストの方法を検討することをお勧めします。
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